空き地にある大きな赤いドラム缶3個の間が彼女の住処でした。
コグモのクモ子は、たくさんの兄弟姉妹とそこに住んでいます。
秋の風は澄み切って、コスモスの香りを少しだけ届けてくれます。
今日も赤ドラムの間に張ってある大きな巣の家では、上を下への大騒ぎです。
「俺様のチョコレートを返せ!」
「なんのことかな?」
「お前の口の中だよ!!」
「腹の中にはいってしまったから、代わりに糸で我慢したまえ」
「糸なら俺様も出せるさ!」
「兄者たち、もうやめてよ!家が揺れて仕方がないわ」
「クモ子は黙ってろ!これは男の喧嘩さ」
蜘蛛の一家は、そのような騒がしい毎日でしたよ。
ある時、すさまじい突風が突然やってきました。
巣の土台となっていた赤いドラム缶は、横に倒れ転がっていきました。
当然、蜘蛛の一家も跡形もなくなってしまいました。
クモ子は、大風に飛ばされながら、必死に糸を出し続けましたよ。
クモ子の糸は、大きなお空の雲の端っこに引っ掛かり
クモ子は雲の上に乗ることができました。
それからクモ子は雲子となって、永遠に下界を見守り続けています。
ほら、あの雲の上には、きっと雲子が隠れていますよ。