天高く薄く覆いをかけし雲
投稿者: budou
古い車
オンボロな昔の車のエンジンのように
記憶を呼び起こすのに、温まるための時が必要だ。
私の記憶の空白を埋めるパズルは
その時に同じ時を過ごした人に預けてある。
真っ白なムラのない空は
私の心に似ている。
茶碗
割れた茶碗我に似合いの器かな
弱風
秋風の弱く吹く日は珍しき
記憶
故郷ぞ君の記憶に留まりし
歩道
街路樹を切られて暑い歩道かな
夢の家
前の家夢の中で訪れし
知人宅に初めて訪れて
人の家借りた猫より大人しく
汽笛
月明り町に轟く汽笛かな
アキアカネ
山並みを砕きし夢の秋茜
前の家
前の家更地になりて広きかな
夜会
秋風夜風涼やかに、秋の訪れ告げ行かん。
夜会のお誘い喜々として、春のごとくに心舞う。
我は根もなし浮きし身の、関公捧ぐ鬼殺し。
涼し夜風に身をさらし、汝の願いを捜さんか。
風眠
秋風の心地よさには眠かりし
秋の風
秋の風北側の部屋は肌寒し
クモ子の雲
空き地にある大きな赤いドラム缶3個の間が彼女の住処でした。
コグモのクモ子は、たくさんの兄弟姉妹とそこに住んでいます。
秋の風は澄み切って、コスモスの香りを少しだけ届けてくれます。
今日も赤ドラムの間に張ってある大きな巣の家では、上を下への大騒ぎです。
「俺様のチョコレートを返せ!」
「なんのことかな?」
「お前の口の中だよ!!」
「腹の中にはいってしまったから、代わりに糸で我慢したまえ」
「糸なら俺様も出せるさ!」
「兄者たち、もうやめてよ!家が揺れて仕方がないわ」
「クモ子は黙ってろ!これは男の喧嘩さ」
蜘蛛の一家は、そのような騒がしい毎日でしたよ。
ある時、すさまじい突風が突然やってきました。
巣の土台となっていた赤いドラム缶は、横に倒れ転がっていきました。
当然、蜘蛛の一家も跡形もなくなってしまいました。
クモ子は、大風に飛ばされながら、必死に糸を出し続けましたよ。
クモ子の糸は、大きなお空の雲の端っこに引っ掛かり
クモ子は雲の上に乗ることができました。
それからクモ子は雲子となって、永遠に下界を見守り続けています。
ほら、あの雲の上には、きっと雲子が隠れていますよ。