ひと時

キイロスズメバチの立派なのが道に落ちていたよ。

寿命か、踏まれたか、襲われたか。

綺麗な姿のままだったよ。

短い命はつき、また巡るんだね。

そんな夏の日のひと時に、太陽は少し欠ける。

カラスの手紙

ある路地裏の土の道に、水たまりがあります。

ここは、入り組んだ長屋の迷宮といったところでしょうか。

そんな所の奥のほうに一つの文化住宅がありました。

階段は、今すぐにも抜けてしまいそうですね。

その文化住宅の2階にクレハとミズハは住んでいました。

お隣同士で、クレハとミズハは、仲良しの女の子です。

今日も泥んこになって、ふたりは水たまりで遊んでいます。

そんなある日一匹のカラスが、その辺の道の真ん中に傷付いて落ちていました。

クレハとミズハは、カラスを持って帰り、手当てをしてあげましたよ。

そして元気を取り戻したカラスは、数日後、大空に戻ってゆきましたね。

そして、時は去り20年の年月が経ちました。

クレハとミズハは、それぞれお母さんになっていましたよ。

そんなある日二人のもとに封筒が届きました。

その封筒のなかには、カラスの黒い羽根と2枚の金貨が入っていましたよ。

その封筒には差出人は書いていませんでしたが、

2羽のカラスが、さっき飛んで行ったと、二人の子供たちが話していましたね。