何者になれずともよし秋の暮れ
窓の光
曇りでも窓は仄かに秋の日や
薄曇り
薄曇り心の中も鉛色
算盤
晩秋に手はかじかんで珠弾く
防犯係
大声でうるさき人は防犯に
匂い
金木犀匂いはすれど目に見えぬ
曇り日
曇り日の昼下がりの静けさや
紅白
紅白で今年の流行りの曲ぞ知る
えのき
スーパーのエノキの土は楽しかな
夕暮れ
目は痛し楽しみはなし秋の夕暮れ
コップ
在りし日の父のコップで酒をつぐ
襟元
吹く風に襟元寒し秋の夜半
照明
どの部屋もいつの間にかLED
渋柿
(銅鐸を見て思う)
渋柿を食えば鳴るかな銅鐸よ
列車
(こんな透き通った夜には銀河鉄道も現出する)
月明り冷えた鉄の列車ゆく