クモ子の雲

空き地にある大きな赤いドラム缶3個の間が彼女の住処でした。

コグモのクモ子は、たくさんの兄弟姉妹とそこに住んでいます。

秋の風は澄み切って、コスモスの香りを少しだけ届けてくれます。

今日も赤ドラムの間に張ってある大きな巣の家では、上を下への大騒ぎです。

「俺様のチョコレートを返せ!」

「なんのことかな?」

「お前の口の中だよ!!」

「腹の中にはいってしまったから、代わりに糸で我慢したまえ」

「糸なら俺様も出せるさ!」

「兄者たち、もうやめてよ!家が揺れて仕方がないわ」

「クモ子は黙ってろ!これは男の喧嘩さ」

蜘蛛の一家は、そのような騒がしい毎日でしたよ。

ある時、すさまじい突風が突然やってきました。

巣の土台となっていた赤いドラム缶は、横に倒れ転がっていきました。

当然、蜘蛛の一家も跡形もなくなってしまいました。

クモ子は、大風に飛ばされながら、必死に糸を出し続けましたよ。

クモ子の糸は、大きなお空の雲の端っこに引っ掛かり

クモ子は雲の上に乗ることができました。

それからクモ子は雲子となって、永遠に下界を見守り続けています。

ほら、あの雲の上には、きっと雲子が隠れていますよ。

でんでんむしとなめくじ

垂れ込めた黒い雲が、汗をいっぱいかいて地上にそれを振り落としていました。

でんでんとなめなめは、無二の親友です。

今日も一緒に、雲の汗を避けてアジサイの大きな葉っぱの下にぶら下がりながら

お話に夢中でしたよ。

「でんでん君はどこで立派な背中の貝殻を見つけたの?」なめなめが尋ねました。

「気付いた時から、背中にあったんだよ!」でんでんは答えました。

「僕もそれがほしいなー 少し貸してくれないかな?」

「それが貸せないんだよ。背中から外れないのさ…」

「それならなめなめ君に合う貝殻を一緒に見つけに行こうよ!」

でんでんは勢いよく言いました。

「うれしいなー 見つけにいこう、行こう!!」

なめなめは楽し気に返事をしました。

空から雲の汗は落ちなくなり、

でんでんとなめなめは大きな葉っぱから地面に降りて

手をつなぎながら、貝殻を探しに出発しました。

ほどなく、ちょうどでんでんのと同じくらいの大きさの貝殻が見つかりましたよ。

「これを着てごらんよ!」でんでんは言いました。

「うん!僕着てみるよ!」なめなめは答えました。

なめなめは、貝殻を着ようとしますが、すぐにズレて着ることができません…

「おかしいな、なんで着れないんだろう?」

二人とも首をかしげていました。

そのときです!!なめなめの体に、白い砂みたいなものが降りかかりました!

なめなめの体はどんどん小さくなっていきました。

「でんでん君、僕なんだか眠くなってきたよ…」

「なめなめ君どうしたんだ!!早く葉っぱに帰らなくちゃ!!」

なめなめの体は干からびていって、ついになくなってしまいました。

でんでんが気配を感じて上を見上げると、

大きな二本足の動物がこっちを見ていました。

でんでんは、粘液の涙を流しながら、アジサイの葉っぱの裏に

なんとか逃げのびました。

そんなことがあってから長い時間が経ちました。

「なぜ、私だけはあのとき、あの恐ろしい二本足の動物に

毒の白い粉をかけられなかったのだろう…」

大きくなった今でもでんでんは、なめなめのことを思い出します。

カラスの手紙

ある路地裏の土の道に、水たまりがあります。

ここは、入り組んだ長屋の迷宮といったところでしょうか。

そんな所の奥のほうに一つの文化住宅がありました。

階段は、今すぐにも抜けてしまいそうですね。

その文化住宅の2階にクレハとミズハは住んでいました。

お隣同士で、クレハとミズハは、仲良しの女の子です。

今日も泥んこになって、ふたりは水たまりで遊んでいます。

そんなある日一匹のカラスが、その辺の道の真ん中に傷付いて落ちていました。

クレハとミズハは、カラスを持って帰り、手当てをしてあげましたよ。

そして元気を取り戻したカラスは、数日後、大空に戻ってゆきましたね。

そして、時は去り20年の年月が経ちました。

クレハとミズハは、それぞれお母さんになっていましたよ。

そんなある日二人のもとに封筒が届きました。

その封筒のなかには、カラスの黒い羽根と2枚の金貨が入っていましたよ。

その封筒には差出人は書いていませんでしたが、

2羽のカラスが、さっき飛んで行ったと、二人の子供たちが話していましたね。