寒波

歳末に向かって嗚呼、最悪の気分だ。

目は徐々に悪くなるし、たまに耳もよくない。

指輪やカメオのいい分だけ、いつの間にかない。

なぜないか記憶にない。それらを探した時の埃で

私の繊細な喉が、ヒューヒューいうのだよ。

いやだいやだ、もういや。

今年一番の寒波が、暗い夜空を覆い尽くしているよ…

晴雨

雨降れば晴れの日ぞ待ち遠し

晴れたれば雨のにおいぞ懐かしき

無いものはほしいぞ

あるものは飽きてくる

物も事も全て無い物ねだりさ

季節

季節の変わり目か、体がすごく重いね。

先ほどまでの雨がやんで、颯爽とした夜風が

窓から強く吹き込んできている。

家々の瓦は月光ならぬ街明かりで、きらきら光っているよ。

ああ、ボーっとした頭に脈絡のない英雄が浮かぶ…

范増よ、今宵僅かな星々に項羽の算命はいかに?

私もまた、愉快ならざる世の中に重い体はますます沈む。

またボチボチ降ってきて、星は消えたよ…

ああ、風は冷たく心地よい。秋の訪れね。

苦痛を享楽したい

ええ、ええ私自身が病気でやむなく死んでしまうことは

仕方がないことであります。

そんなことより、家族やペット・親友が死ぬことのほうが

とっても恐ろしいです。

それにしてもですね、はい、いざ仕方なく辞世となりますと

心残りもないとはいえませんね。

残された命への心配ですよまさに。

人間関係の清算ですね。

今日はあいにく曇りですから

ある意味、私におあつらえ向きの感じですね。

できるなら余命は知りたいですが

天命ですから算命できません、もちろん。

こんな愚痴が出てしまうほど調子が悪ったのです。

それこそ命の覚悟を迫られるほどにですね。

今、これが書けているということは、今回は乗り越えたと思います。

ご心配をおかけしました。それにしても宮沢先生のようにはまいりませんね。

涼風

天上に涼風はそよと吹き

地上には初夏の熱が突き刺さる

地にある汝は人かダンゴムシか石ころか

みんなに風と光は降り注ぐよ

命は常に変化し流転する

誰もその時を逃れることはできない

ただその日まで懸命に生きるのみよ

クチナシ

部屋の中からクチナシ香る。

庭に出てもクチナシ咲かず。

外の空気は雨上がり。

けれども外では香らない。

部屋の中には花はない。

私の心に咲いたのか。

歩道

横断歩道も守らねば

人は車にはねられる。

物もお金を出さなけりゃ

泥棒だらけになっちまう。

お国のルールを守って平和。

それじゃお国は誰が見るのか。

意思

左目より入りて

左足より出づる。

痛みの元は天にあり

意思は宇宙に満ちて

命を司る。

運命まで抗うのみ。

上空

上空に風は行き交い

雲の階段を渡る

春風は挨拶を告げて

ジェット機は通り過ぎた

今日はとても良い天気だ

まわる

怒るな怒るな、お星はまわる

おこるなおこるな、月さま光る

落ち着け落ち着け、心は変わる

雨ガラス

ずぶ濡れカラスが道わたる。

ずぶ濡れカラスは黒光り。

濡れた尾羽をふりふりと

雨に濡れて大変ね。

この星

三界に命は廻り

宙宇の果ての向こう側に

人はいるのか。

善なるものは悪となり

悪なるものも善となる。

稲妻は下から上に落ち

雨も土から雲に降った。

ある塵はその雨に濡れ

この星に溶けていった。

白い鳩

高き枝は騒ぎ、大時計は正午を告げた。

白い鳩は、木の上からこちらを見ている。

35年前の遊具は、その公園にまだしっかりとあるが

今の子供たちには、不人気のようだ。

(新しい遊具に全ての子供は集まる)

大公園を抜けると、一級河川が見えてくる。

私はしばらくの間、その流れを見つめていた。

ひっつき虫

冷風は体にぶつかり

春香はあたりに漂う。

ある子は私に声をかけた。

話しの途中に、その子のズボンにひっつき虫を付けたよ。

彼は、にこりと笑ったよ。

乱舞

宵闇に灯る光。

蛍の乱舞の開演だ!

小川はゆるりと流れてて

向かいの田んぼもちらほらと

けれども今は見ぬ光。

初夏の楽しみ今何処。

初夏の楽しみいまいずこ。